薔薇の花
その人は北の街で仕事をしていました。しかし、訳あって大きな街で働くことになりました。
北の街を離れる1週間前、何気無くラジオをつけました。
いい曲だな。
あいにく電波が悪く、雑音にかき消され、誰の何という曲かは分からず仕舞いでした。
大きな街で埋もれるような生活に別れを告げるときがいつの間にかやってきて、次の街で生きていくことになりました。
今度の街についた初日にラジオをつけるとあの曲が流れてきました。
北の街で最後に聴いたあの曲でした。
今回は聞き漏らさないようにじっくりと耳をそば立てました。
懐かしく新しい毎日が始まることを胸に。
着任した街の名は京都といいました。